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もっと知りたい!免疫と納豆菌の関係 S-903 納豆菌コラム

5月(May)Vol.2 腸内環境と免疫の関係

「腸」は、全身の健康にとって大切なもの。

みなさんの中にも、梅雨入りを前にしたこの時期あたりから、体調を崩しがちになる人もいるのではないでしょうか。こうした体調の変化には、実は、私たちの「腸」が深く関わっているのをご存知でしたか?

前回4月のコラムで「免疫力」のお話がありましたが、身体が空気に触れている時点で「免疫機能」が発揮されている状態ともいえるほど、私たちは免疫機能に守られています。健康の維持、老化(炎症)や病気の予防、感染から身体を守る、抗体をつくる、これらすべてが「免疫」の役割です。

小腸にある “腸管関連免疫器官” をはじめとして「腸」には身体全体の6~7割もの免疫細胞が集まっており、免疫機能の総合指令所となっています。

辻典子先生イメージ

このしくみが、24時間休むことなく、病原菌やウイルスを監視し、炎症で組織がこわされないように働いてくれることで、私たちの健康は守られています。ですので、この総合指令所がいつでも元気に稼動できるように、私たちは意識してよりよい腸内環境を作ることが大切になります。

よい腸内環境とはどのようなものなのでしょうか。

腸内細菌の種類や働きによってその環境が左右されていることがわかってきています。私たち一人ひとりの腸には1000兆個、数千種類もの腸内細菌が住みついているとされ、その様子がまるでお花畑のようなので、「腸内フローラ」と呼ばれています。

腸内細菌には大きく分けて、「善玉菌」「悪玉菌」と、そのどちらでもない「日和見菌(ひよりみきん)」とよばれるグループがあり、善玉菌は人体にとって有益な作用をもたらす菌、悪玉菌は人体にとって好ましくない作用をもたらす菌を意味します。日和見菌は中間的な菌で、善玉菌が優勢なら何も悪さはしませんが、悪玉菌が優勢になると悪玉菌に加勢し、悪玉菌を増やします。

お花畑のような腸内フローラ

大切な“食生活”をデザインしよう!

食事イメージ

では、私たちが、よりよい腸内環境を作るにはどうしたらよいのでしょうか。そこには、「食」が大きく影響し、「食」により支えられています。

和食、なかでも発酵食品は、腸内環境を改善し、免疫力を高めるのに効果的です。和食や発酵食品は、免疫力をはじめとした健康の維持・向上はもとより、“美味しさ”、“食べる楽しみ”などで食文化を昔から支えてきているともいえます。

日本の発酵食品には、味噌、醤油、ぬか漬けなど様々あり、「納豆」も日本独自の伝統的食品として腸内環境改善に打ってつけの食品です。多くの日本の発酵食品がそうであるように、「納豆」は、“プロバイオティクス”(=善玉菌そのものを摂る)である納豆菌と、“プレバイオティクス”(=善玉菌のエサになる)としての食物繊維(大豆に含まれます)で出来ており、両面を兼ね備えた“シンバイオティクス”といえます。このように「納豆」は、日本人の食文化に合い、腸内環境をより改善し、免疫力をより高める有力な“シンバイオティクス”として期待されています。

次世代の子どもたちに“食”の楽しみを。

食の欧米化や偏食などによる腸内環境劣化の問題が、次世代の子どもたちに引き継がれてしまう悪循環を防ぐためにも、和食、発酵食品、納豆を生活に組み込み、免疫効果を意識することに加え、美味しさ、食べる楽しさなどの食文化も含めた“食生活全体のデザイン”をいかに描いていくかが、今後の課題といえます。

最近では、免疫に対する機能性がより高い納豆菌を使った納豆も手に入るようになり、これまでにインフルエンザ、ノロウイルスの感染予防効果が期待できるという実験結果もでていますので、こういった食材も“食生活全体のデザイン”の中にうまく取り入れながら、できるだけバランスのとれた食事も心がけることで、免疫力を高めていきましょう。

辻典子先生
辻典子先生
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 バイオメディカル研究部門
免疫恒常性研究特別チームリーダー・上級主任研究員、農学博士

1995年 東京大学大学院農学生命科学研究科にて博士号取得、同年 米国Yale大学School of Medicine博士研究員、1997年 農林水産省家畜衛生試験場 主任研究員、2001年 農業生物資源研究所 主任研究員、2005年 産業技術総合研究所年齢軸生命工学研究センター チームリーダー、2015年より現職

  • 主な研究内容は、腸管免疫・免疫全般(食品による免疫細胞機能の増強、免疫バランスの改善⇒アレルギーなど炎症性疾患の制御、感染症対策など)。
  • 研究成果を基に、株式会社腸管免疫研究所の基盤技術と創業アイディアを産み、科学アドバイザーを務める

※肩書は取材当時のものです