暖かい日が多くなってきましたが、この季節になると花粉に悩まされる人も多いのではないでしょうか。もしかしたら、今年から発症した人もいるかもしれません。本来身体に無害である花粉が、なぜ、つらい症状を引き起こしてしまうのでしょうか。そこには、私たちの身体にある「免疫力」と深い関わりがあります。
そもそも免疫力とはどんなものか、普段あまり意識されないかもしれません。目に見えるところですと『皮膚』や『粘膜』も免疫機能にあたります。普段はこの皮膚や粘膜が身体に有害なものの侵入を阻止し守っています。でも例えば火傷などで皮膚のバリアが壊れてしまうと、そこから有害なものが体内に侵入してしまうことになるのです。つまり、身体が空気に触れている時点で免疫機能が発揮されている状態ともいえるほど、私たちは免疫機能に守られています。健康の維持、老化や病気の予防、感染から身体を守る、抗体をつくる、これらすべてが「免疫力」の役割です。
ここで最初の花粉のお話に戻りますと、 ダニやカビ、花粉などのアレルギーを起こす物質はアレルゲンと呼ばれていて、体内に入ってくると、アレルゲンに特異的な抗体(IgE)が結合し免疫細胞が反応します。繰り返されるアレルゲンの侵入に対しての過剰な反応による炎症によって、目のかゆみや鼻水、くしゃみなどの、いわゆるアレルギー症状がでてくるのです。このアレルギー症状は、免疫細胞の存在比率のバランスが崩れるために生じるといわれています。
免疫バランスが崩れてしまう原因は、大気汚染や食生活の変化などともいわれていますが、ストレスも大きな原因の1つとなっています。
現代社会においては、多少なりともストレスを感じながら生活していくわけですが、ストレスを感じると、そのストレスに対抗するため身体は攻撃態勢となり、その攻撃性が眠りにくくなるなどの症状を引きおこします。睡眠不足などが続くと、異物が入ってくる際に反応するはずの免疫細胞の働きが鈍くなり、免疫低下を引き起こすことになります。一方で、免疫力は年齢によっても変化し、20歳くらいでピークを迎え40歳では半分に低下します。
最近では、免疫に対する機能性が一般的な納豆菌の1.5倍あるという納豆菌の研究も進んでいます。また、その納豆菌を使った納豆を食べることで、鼻炎症状の緩和やくしゃみ、目のかゆみなどの和らぎが見られ、花粉症症状緩和効果が示唆された実験結果もでています。
- 林京子先生
- 中部大学大学院 工学研究科 客員教授、薬学博士
1976年3月京都大学薬学研究科博士課程修了。富山大学大学院医学薬学研究部の講師を経て2017年4月から現職。主な研究内容は、植物由来の天然成分や合成化学物質のウイルス増殖阻害作用の解明による抗ウイルス薬の開発、生体の感染防御機能に着目したウイルス感染症対策の検討、など。
※肩書は取材当時のものです