インフルエンザやノロウイルス感染症など、冬に流行するイメージの強い感染症ですが、実はこれからの季節にも注意が必要です。みなさんの中にも、季節の変わり目に風邪のような症状で体調を崩してしまった方もいるかもしれませんが、いわゆる「夏風邪」と呼ばれるものには、主にヘルパンギーナ、手足口病、咽頭結膜熱、流行性角結膜炎といった感染症があります。これらの感染症は「水」を介して感染することも多いため、比較的子どもがかかりやすくなります。
一方で、ウイルスの流行には、気温と湿度も関係しています。
気温が低く乾燥する状態は、ウイルスにとって最適な環境なのですが、実は、エアコンが効いた場所は、低温でしかも乾燥している場合が多く、ウイルスに感染しやすい冬と同じ環境になっているといえます。最近では、感染症の流行には季節はあまり関係なくなってきていているように思います。
感染症から身を守るには、手洗いやうがいなどでの予防はもちろんですが、私たちの身体にもともと備わっている免疫力を正常に働かせることも大切です。
この免疫作用は、体内に侵入した細菌やウイルスなどを異物(自分ではないもの)として攻撃することで、自分の身体を正常に保つという働きをします。つまり、私たちの体内では常に、ウイルスなどの異物が入り込んでいないか免疫細胞(マクロファージやナチュラルキラー(NK)細胞)がパトロールしていて、異物に出くわすと食べたり、攻撃し破壊したりします。さらに、免疫細胞はそこでの異物の顔を忘れません。次に同じ異物が侵入するとそれを特定し、個々の異物に応じた抗体ですばやく対応するのです。
暑い季節は基礎代謝がおちることからも食欲が低下しがちです。そうするとエネルギー不足から免疫力も低下することがあります。また、気温が上昇すると外と室内の温度差による自律神経のバランスのくずれからも、免疫力は低下してしまいます。
症状が重症化してしまわないためにも、季節を問わず予防と対策が大切です。
最近では、免疫に対する機能性が一般的な納豆菌の1.5倍あるという納豆菌を使った納豆を食べることで、大人風邪(ライノウイルス)の高い予防効果が期待できるという実験結果もでていますので、こういった食材もうまく取り入れながら、できるだけバランスのとれた食生活も心がけることで、免疫力を高めていきましょう。
- 林京子先生
- 中部大学大学院 工学研究科 客員教授、薬学博士
1976年3月京都大学薬学研究科博士課程修了。富山大学大学院医学薬学研究部の講師を経て2017年4月から現職。主な研究内容は、植物由来の天然成分や合成化学物質のウイルス増殖阻害作用の解明による抗ウイルス薬の開発、生体の感染防御機能に着目したウイルス感染症対策の検討、など。
※肩書は取材当時のものです