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もっと知りたい!免疫と納豆菌の関係 S-903 納豆菌コラム

12月(December)Vol.9 「身体の入り口」口の免疫作用について

口の中の免疫作用、意識していますか?

口は、食べ物はもちろん、病気を引き起こす病原体などの異物が入って来る身体の入り口と言えます。口の粘膜には「粘膜免疫」と呼ばれる病原体に対する防御機能が備わっています。

健康の維持、老化や病気の予防、感染から身体を守る、抗体をつくる、これらすべての免疫機能は、大きく「自然免疫」と「獲得免疫」に分けられます。今回は「口の中の自然免疫」についてのお話です。

口の健康が全身の健康につながっている!

自然免疫は、私たちの身体にもともと備わっている防御機能で、身体を守るための最前線の戦いをしてくれています。防御の方法はいたってシンプル。病原体を「食べてしまう」ことで排除します。
こうした自然免疫の働きを高めていくには、近年話題の「腸内環境を整える」ことも大事ですが、食べ物や、病気を引き起こす病原体などの異物が入って来る身体の入り口として、「口腔内のケア」も実は重要です。

口の中は、常に数百種類以上の細菌、また、口内炎の原因にもなるカンジタ菌などの真菌が生息していて、私たちの体は腸内細菌と同じように、口の中の細菌とも上手に共存しています。口の中に細菌が適切に存在することで、多くの病原体の感染を防ぐのです。

小林良喜先生

5月のコラムでも触れている腸内フローラと同様に、「口腔内フローラ」を整えていくことで、むし歯や歯周病を予防するだけではなく、インフルエンザや肺炎といった全身的な感染症の予防にもつながり、つまりは全身の健康状態にもつながっていくと考えられています。

納豆をはじめとする発酵食品に期待すること

口腔内の免疫機能を整えていくときには、「抗菌ペプチド」という物質が関係しています。菌に対する殺菌作用や炎症を抑える働きのある「抗菌ペプチド」も、私たちの身体にもともと備わっているものですが、私の進めている研究では納豆が作用して「抗菌ペプチド」が増加し、歯周病の原因となる菌を減少させる働きがあることもわかってきています。納豆をはじめとする発酵食品は、腸内環境だけではなく、口腔内の環境も整えてくれる食品として、期待しています。

納豆菌の感染症予防効果にも期待

最近では、インフルエンザウイルスやノロウィルスに対する感染症予防効果が期待できる納豆菌の研究も進んでおり、納豆菌のさまざまな機能性が確認されています。

口腔内の状態から「未病への気づき」を

私が現在進めている研究から、今後は、口の中の状態を見ることで全身の健康状態を推測し、身体の状態に対してどう備えたらよいのか、その方向性まで示せないかと考えています。
例えば口腔内の状態を測る計測値から推測して、「今の状態であればこういう食材を摂り入れると健康な状態に戻っていく」というところまで提示できるようにしたい、私たちの身体にある防御機能である免疫力も、何らかのかたちで指標を提示できるようになればいいと思っています。
病気とは言えない、いわゆる未病(みびょう)の段階で、「今の状態だとこういった病気になりがち」ということがわかれば、それに対処できるよう、健康状態の気づきを促すようなことを可能にしたいと考えています。

小林良喜 先生
小林良喜先生
日本大学 松戸歯学部 助教、博士(歯学)

2002年日本大学松戸歯学部臨床研修医修了。米国アラバマ大学バーミングハム校免疫ワクチンセンター(ポスドク)を経て2011年4月に帰国し現職。主な研究内容は、粘膜免疫学を背景とした口腔免疫機構の解明。発酵食品などの摂取により腸管を起点とした全身恒常性の維持・向上を口腔領域にて検討。唾液による全身健康状態を把握するシステムの開発、など。

※肩書は取材当時のものです