あなたのまわりには、歯周病の方はいらっしゃいますか?
「平成28年歯科疾患実態調査(厚生労働省)」によると、歯周炎の兆候が認められる方を合わせると日本人の30代以上のおよそ3人に2人が歯周病にかかっている状況です。
歯周病は、細菌の感染によって引き起こされる炎症性の疾患です。歯と歯肉の境目のそうじが行き届かないでいると、そこに歯垢がたまってしまい、多くの細菌が停滞し、歯肉が「炎症」を帯びて赤くなったり、腫れたりします。そして、進行すると歯周ポケットと呼ばれる歯と歯肉の境目の溝が深くなり、歯を支える土台が溶けて歯がグラグラと動いてしまったり、最後には歯を抜かなければいけない場合もあります。
歯周病は口の中だけの病気だと思われがちですが、実は全身の健康にも影響を及ぼすことが最近の研究でわかっています。歯周病の原因となる細菌によって歯ぐきに炎症が起き、歯周ポケットからばい菌などが血管に入ることで、例えば心臓の酸素が不足して胸部が痛くなる『狭心症』をはじめとして、心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病、動脈硬化、誤嚥性肺炎、骨粗しょう症、関節炎・腎炎など、全身のさまざまな臓器に影響を与えるリスクが高まってしまう場合もあります。全身の健康を守るためにも、口腔内フローラ、つまり、お口の免疫機能も整えていくことが大切です。
この口腔内フローラを整える食材のひとつに「発酵食品」があります。「納豆」は免疫力をより高める有力な食材として注目されていて、その納豆を作る納豆菌の中でも「S-903 納豆菌」は、歯周病のもとになる細菌を減らしてくれる可能性が期待されています。
「S-903 納豆菌」が歯周病のもとになる細菌を減らすことを確認するために、マウスに「S-903 納豆菌でつくられた納豆」や「S-903 納豆菌」を与えて、4週目、8週目の唾液中の細菌の集まり(口腔内フローラ)を観察する実験をしてみました。
実験結果を見てみますと、「S-903 納豆菌でつくられた納豆」および「S-903 納豆菌」を摂ったマウスは、摂っていない(生理食塩水だけ摂った)マウスに比べて、重度の歯周病のもとになる口腔内細菌(ジンジバリス菌を含む)、歯周病のもとになる口腔内細菌(プレボテラ菌を含む)の両方を減少させていることがはっきりわかります。この実験結果から「S-903 納豆菌」には歯周病のもとになる細菌を減らす可能性が確認されました。
古くから健康的なイメージのある「納豆」は、最近の研究によってさまざまな健康効果が明らかになってきていますので、私たちの健康サポートにも上手に摂り入れていきたいですね。
マウスに対する投与実験の概要
- 対 象:マウス(雌)
- 試験食:「S-903 納豆菌」でつくった納豆、「S-903 納豆菌」
- 試験方法:マウスに試験食・生理食塩水(非投与)を8週間経口投与し、 4週目、8週目の
口腔内フローラ(唾液中)を解析。
- 小林 良喜先生
- 日本大学 松戸歯学部 助教、博士(歯学)
2002年日本大学松戸歯学部臨床研修医修了。米国アラバマ大学バーミングハム校免疫ワクチンセンター(ポスドク)を経て2011年4月に帰国し現職。主な研究内容は、粘膜免疫学を背景とした口腔免疫機構の解明。発酵食品などの摂取により腸管を起点とした全身恒常性の維持・向上を口腔領域にて検討。唾液による全身健康状態を把握するシステムの開発、など。
※肩書は取材当時のものです