今回は特別企画として、栄養士の永倉いちず(えいくら いちず)先生[右]と、学習塾塾長 我妻宏次朗(あずま こうじろう) 先生 [左]によるスペシャル対談をお届けします。
- いよいよ受験シーズンですね。我妻先生の教室にはたくさんの生徒さんが通われていると思いますが、最近の受験生の様子はどうですか?
- とても熱心でまじめな子が多いと思います。親の期待にも応えようと、とてもがんばっているんです。でも反面、線の細さも感じます。あまり外に発散できていないというか、兄弟の数もまわりにいる大人の数も減ってきていますから、プレッシャーをうまく発散できていないように見えますね。あと、食も細いように思います。
- 食ですか、朝ごはんを抜いてしまうとか?
- そうですね、朝ごはんもそうですし、塾の授業前の間食もそうみえます。
- 食べることって、とても大事なんですよね。栄養補給の意味合いはもちろん大きいのですが、朝ごはんを食べないと脳に栄養がいかないので、午前中の授業に集中しにくいのではないかと思います。とにかく炭水化物を摂ってほしいですね。食べないよりは何かしら口に入れたほうがいいんですよ。
- 炭水化物なんですね。
- ブドウ糖がエネルギー源になるんです。基本は炭水化物とタンパク質の組み合わせで摂ってほしいです。お米がおすすめですが、朝は忙しいですから、それこそ、白いご飯に納豆をかけて食べるとか、パンであればベーコンを添えるとか。すぐ用意ができそうなものが良いですね。
- 今は食も豊かになって選択肢も多いはずなんですが、そもそも食べていない子を見かけることが多くなってきました。でも、当たり前のことを当たり前にできている子というか、きちんと食べている子の方が、結果、伸びている気がします。
- 実は私、現役受験生のころ、勉強が思うように進まなかった経験があって。今思うと原因は食だったんですよ。きちんと「食べて」いなかったのが良くなかったんですね。
- 子どもたちを見ていると、まわりが見えなくなって、食べていない子もいるんです。勉強に集中するというよりは、まわりが見えなくなってしまって、余裕がなくなるというか。
- 「食べること」って、自分の身体に対してだけのことだと思いがちですけど、それ以外にも、まわりの人とお話ししたりする時間とか、ホッとした息抜きとか、好きなものを食べてリフレッシュするとか、結局はそういうことが心の余裕につながるんだと思うんです。今の子はその時間があまりとれていないのでしょうか。
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先ほどの話にもつながりますが、忙しいことに加えて、気軽に話せたり一緒に過ごしたりできる人がまわりに居ない環境なのかもしれませんね。
授業のある日は子どもたちに「ちゃんと食べてる?」って声をかけたりしています。
食事の内容では、どんなことを気にすればいいですか? -
バランスよくということは大切ですが、やはり炭水化物とタンパク質の組み合わせを意識してほしいです。良質なタンパク源として、納豆などの大豆製品もおすすめです。
私がこの「納豆サイエンスラボ」で関わらせていただいたレシピでも紹介していますが、納豆と鶏肉や長芋との組み合わせも試してほしいです。
鶏肉にはアミノ酸が多く含まれていて、疲労回復効果が期待できます。『納豆入りネギマ風ハンバーグ』や『ふわふわ納豆鶏つくね』は、鶏ひき肉を活用したレシピです。鶏ひき肉と納豆の相性はいいですよ。
あとは今が旬の長芋もおすすめです。納豆や長芋に含まれるネバネバ成分には鼻やのどの粘膜を保護する働きがあると言われているので、風邪の予防効果が期待できます。 - 私の子どもも納豆が好きでよく食べていますよ。
- うちもです。最近では、免疫に対する機能性がより高い納豆菌を使った納豆もスーパーで見かけるようになったので、上手に取り入れていきたいですね。
- 今の組み合わせのお話もそうですけど、何を選んでどう摂り入れていくか、自分で考えることがとても大切なことですね。
- 本当にそう思います。
- 受験が終わるまで長期戦ですから、のりきるための身体づくりも重要なのですが、受験当日の食事も気にかけたいです。
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そうですね、炭水化物とタンパク質の組み合わせとして、例えばおにぎりであれば、中の具材を鮭などの魚系にしてみるとか、味噌汁にお野菜や豚肉など入れて具だくさんにしたり、納豆を入れてみたりとか。
あと、消化のよい食事を意識してみてほしいです。例えば温かい汁もの、お茶でもいいですが何か温かい飲み物を一緒に摂ると消化もよくなります。あとはよく噛んで食べること。 - 消化のよいものは本当にポイントです。験担ぎで前の晩や受験当日のお昼に「カツ」を準備してくれる保護者がいらっしゃるのですが、実は子どもたちの体にはちょっと負担になってしまうようで、受験当日のお昼に食べると午後の試験にはかなり影響がでてしまいます。私は「保護者の方に代わりにたべてもらってね」と言っています。
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そうですね。気をつけたいですね。
先ほど納豆を活用したレシピを紹介しましたが、納豆は食物繊維が豊富で消化が良く、お腹にやさしいのでお夜食にもいいですよ。もちろん、良質なタンパク源でもあるので、受験生にはぜひ摂り入れてほしい食材です。 - 「食べること」は日常生活の1つですが、誰とどんなふうに食べるか、たとえ1人だとしても、だれか周りにいる環境なのかどうか。結局はそういうことが受験にもつながってくるのだと思います。
- 学生時代、受験勉強が思うように進まなくなってしまったときも、結果として食が解決してくれたように思います。母が準備してくれた食事を毎食毎日食べるようにしたんです。で、勉強もリビングでして。栄養補給はもちろんできましたけど、食事も含めた“リビングでの時間”が私にはよかったと思います。
- 1人でやっていると煮詰まってしまうこともありますからね。そして、ふんばりのきく子は、きちんと食べているし家族との関係性もうまくいっています。
- 受験をのりきるためにも、食生活を大切にしてほしいですね。
- 平常心を忘れずに望んでほしいです。特別なことをしようとしないで、普段と同じことをいつもと同じ心構えでこなしていく。今日、お話をしていて、食べることも同じだと思いました。普段の食事から意識していくことが大切ですね。
- そうですね。この「納豆サイエンスラボ」で紹介している納豆レシピも、ぜひ活用してほしいです。
- 永倉 いちず先生
- フードスタイリスト / 料理家 / 栄養士
大学家政学部卒業後、料理の道へ。栄養士の資格を生かして保育園に勤務。現代の子供の食事情を目の当たりにし、ココロもカラダも豊かになる給食作りと親子の食育、乳幼児のアレルギー食に力を入れる。その後、企業の商品開発・メニュー開発に携わり、栄養士としての知識を取り入れた様々なメニューを世に送り出す。
現在は、専門学校での専任講師を中心に、メニュー開発、広告、飲食店コンサルティングやレシピ連載など多岐に渡り活動中。
※肩書は取材当時のものです
- 我妻 宏次朗先生
- 学習塾塾長
大学卒業後、大手進学塾にて一斉指導講師及び中学受験・高校受験の進学指導主任を担当。
一斉指導の枠にとらわれず、全ての生徒達の成績を上げることを目指し、港区田町に個別指導専門学習塾、学研CAIスクール港中央校を開設。
講師歴は30年にわたり、これまで5,000人以上の生徒の指導にあたる。
※肩書は取材当時のものです